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探偵食堂 ~ラーメン~
調査が終わり、依頼者に報告を終えたころ、俺のもうひとつの仕事が始まる。
営業時間は調査が入ってない時。人は「探偵食堂」って言ってるよ。
メニューはない。勝手に注文されてもできないものは作らないよってのが俺の営業方針さ。
客が来るかって?
それが結構来るんだよ。
今日のメニューは「ラーメン」だ。
たしかドラマ「深夜食堂」でラーメンの話は「ラーメン」、「カレーラーメン」と「タンメン」の3話があったと思うんだが、「タンメン」以外、「めしや」で出すラーメンは基本インスタントさ。
使っているのは「ポロイチ」ことサッポロ一番の袋めん。
最初のラーメン話の「ラーメン」の回。
地回りのヤクザ「竜」の舎弟「ゲン」がめずらしくひとりで「めしや」を訪れて頼んだメニューがラーメン。
出てきたのは、味玉、メンマ、ねぎ、ナルトとチャーシューが乗ったしょうゆラーメン。
これを見たゲンは「海苔は?」とマスターを睨む。
マスター「あいにく切れちまってなぁ。」
ゲン「切れたっ!? 切れた・・・、 ラーメンに海苔が乗っかってねぇなんてありえねぇだろっ」
それでも喰って「めしや」をあとにしたゲンは、兄貴分の仇である敵対するヤクザの若頭を刺し、姿を消した。
この回で好きなセリフがある。
新宿二丁目で小寿々が営むゲイバーに潜伏するゲンを見つけたマスター。
兄貴分に尻ぬぐいさせていい気なもんだとゲンを叱責する。
マスター「やっちまったこと、なかったことにはできねぇよ。大事なのは、そのあとどうするかだ。」
ゲン「けど・・・、オレ、取り返しのつかねぇことを・・・。」
マスター「取り返しがつかないてぇのは、何もしねぇで嘆いてる奴の、言い訳じゃあねぇのか。」
警察に出頭する前にウチでラーメン喰ってけとゲンに出したラーメンには海苔が乗っかっていた。
そういえば、オレの古くからの友人が袋のラーメンの思い出でこんなことを言ってたな。
『袋ラーメンはその家の文化そのものである』
若いころ、当時まだ付き合い始めたばかりの彼女の家に遊びに行った時の話で、その彼女は実家暮らしだったそうだ。
家には彼女の母親がいて、彼女は友人に「お腹すいてない、なにか食べる?」と訊いた。
友人は「じゃあ」と返事し、彼女は母親に頼んだところラーメンならすぐ作れると。
しばらくして出てきたのが一切なんにも乗っかってない袋のインスタントラーメンだったそうだ。
友人が「その家の文化」をどう感じたかはさておき、その彼女と母親は今じゃあその友人の嫁と義母さ。
本年もSHD探偵事務所 守谷は24時間・年中無休でご相談を承っております。
*「探偵食堂」は架空の店舗であり、実在しません。