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探偵食堂 ~ぬか漬け~
調査が終わり、依頼者に報告を終えたころ、俺のもうひとつの仕事が始まる。営業時間は調査が入ってない時。人は「探偵食堂」って言ってるよ。
メニューはない。勝手に注文されてもできないものは作らないよってのが俺の営業方針さ。
客が来るかって?
それが結構来るんだよ。
今日のメニューは「ぬか漬け」だ。
うちのぬか床は20年もの。ちょうど探偵のキャリアと同じだ。
ぬか床の手入れは大変だと思っている人がいるようだが意外とそうでもない。
仕事柄、帰れない日もあるが、前もって分かっていればぬかや塩を多めに足しておいたり、長く留守にするときはぬか床を冷蔵庫に入れておけばいい。
2ヶ月近く調査で留守にしていた時もあったけど、ぬか床のうわずみを数センチくらい取り除いた後、ぬかと塩を足し、何日か捨て漬けをすれば元通りになる。
そうやってぬか床の世話をしていると愛着がわいてきて、何ならぬか床が可愛くも思えてくるんだから不思議なもんだよ。ぬか漬けはぬか床からあげたてが一番旨いんだよ。
なるべく風味が落ちないようにボールに溜めた水につけてさっとぬかを落とす。(なかにはあえてぬかを残して食べる人もいるようだ。)
そのあと30分程度冷蔵庫で冷やせば旨いぬか漬けの出来上がりだ。
スーパーとか売ってるのはぬかを落としてからだいぶ時間が経ってるから風味がまったくなくて旨くないものが多い。
うちのだって残ったのを次の日に食べるときには風味が落ちてあまり旨くなくなってるからね。
昔、料理研究家と名乗る人がテレビ番組でぬか漬けを使って酒の肴を作っていくというのを観たんだけど、この人、ぬか漬けを流水でジャブジャブ洗ってたよ。
肩書なんて名乗ったもん勝ちだね。
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*「探偵食堂」は架空の店舗であり、実在しません。